年末調整でいくら戻る?還付金の計算式と控除別の増える額
年末調整の還付金は「控除額 × 自分に適用される税率」でほぼ決まります。 生命保険料を年 12 万円払っていても、 年収 400 万円の人に戻るのは 4,600 円ほどです。 金額の桁を先につかんでおけば、書類を出す前に期待値を調整できます。 自分の数字で計算するなら年末調整 還付金シミュレーターが使えます。
年末調整で還付金が出るのはなぜ?
毎月の給与から引かれている所得税は、あくまで概算です。 「その月の給与がこの額なら、年間ではこれくらいの所得だろう」という前提で、 源泉徴収税額表に従って引かれています。この段階では、生命保険料を払っているか、 iDeCo に拠出しているか、扶養している家族が何人いるかは反映されていません。
12 月の給与計算で、勤務先が 1 年間の給与総額を確定させ、 申告した控除をすべて反映して本来の所得税額を計算し直します。すでに引かれていた額のほうが多ければ、その差額が戻ってきます。これが還付金です。逆に少なければ追徴になり、12 月の手取りが減ります。
還付金の計算式は?
還付額そのものの式は単純で、源泉徴収された合計額から確定した所得税額を引くだけです。
還付額 = 源泉徴収された所得税の合計 − 確定した所得税額
知りたいのはたいてい「控除を申告すると、いくら増えるのか」でしょう。 こちらは控除額に税率を掛けた額になります。
増える還付額 ≒ 控除額 × 所得税率 × 1.021
1.021 は復興特別所得税の分です。所得税率は課税所得に応じて 5%・10%・20%・23%・33%・40%・45% と 段階的に上がるため、同じ控除額でも年収によって戻る額が変わります。 年収 500 万円(40 歳未満・独身・給与所得のみ)なら課税所得は約 178 万円で税率 5% なので、 iDeCo に年 27.6 万円拠出しても戻るのは 1.4 万円ほどです。
年収 500 万円・扶養 1 人だといくら戻る?控除を積み上げた計算
結論を先に書くと、年収 500 万円・40 歳未満・ 配偶者(収入なし)と子 1 人を扶養・生命保険料を年 12 万円支払・ iDeCo に月 2.3 万円拠出、というモデルケースで 戻ってくる所得税は 57,500 円です。 以降はこの 1 件の数字だけを使って話を進めます。
出発点は「何も申告しなかった場合の所得税額」91,100 円です。 毎月の給与から引かれている源泉徴収は、おおむねこの水準を 12 か月に割った額になっています。 ここに控除を 1 つずつ積み上げると、確定税額は次のように下がっていきます。
| 積み上げる控除 | 課税所得 | 確定税額 | この控除で減る額 | 累計の還付額 |
|---|---|---|---|---|
| 控除なし(源泉徴収の前提) | 1,785,000 円 | 91,100 円 | - | 0 円 |
| + 配偶者控除(38 万円) | 1,405,000 円 | 71,700 円 | 19,400 円 | 19,400 円 |
| + 扶養控除 1 人(38 万円) | 1,025,000 円 | 52,300 円 | 19,400 円 | 38,800 円 |
| + 生命保険料控除(年 12 万円支払) | 935,000 円 | 47,700 円 | 4,600 円 | 43,400 円 |
| + iDeCo(月 2.3 万円) | 659,000 円 | 33,600 円 | 14,100 円 | 57,500 円 |
給与所得 3,560,000 円、社会保険料734,500 円(協会けんぽ東京都・概算)、 基礎控除 1,040,000 円を前提とした 2026 年(令和 8 年分)の計算です。
目を引くのは、控除額 38 万円の配偶者控除と扶養控除がそれぞれ19,400 円ずつしか還付を生まないことです。 38 万円 × 5% × 1.021 とほぼ一致します。 「扶養が 1 人増えれば月々がかなり楽になる」という感覚と、実際の金額には開きがあります。
一方、生命保険料控除は年 12 万円払っても4,600 円。控除額が支払額の全額ではなく、 3 区分それぞれで頭打ちになる計算方式のためです。 iDeCo は拠出額の全額が控除になるため 14,100 円と、 4 つのなかで最も効率がよい結果になりました。
なおモデルケースの手取りは、年 3,932,400 円・ 月 327,700 円です(扶養を考慮しない手取り計算ツールの値)。 還付 57,500 円は年間手取りの1.5% にあたります。
控除を 1 つ増やすと還付はいくら増える?
代表的な 3 つの控除について、それだけを申告した場合に戻る額を年収別に計算しました。 40 歳未満・独身・給与所得のみ・他の控除なしを前提とした概算です。
| 申告する控除 | 年収 300 万円 | 年収 400 万円 | 年収 500 万円 | 年収 700 万円 | 年収 1,000 万円 | 年収 1,200 万円 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| iDeCo月 2.3 万円・年 27.6 万円を拠出 | 14,100 円 | 14,100 円 | 14,100 円 | 48,700 円 | 56,400 円 | 64,800 円 |
| 生命保険料控除新契約で年 12 万円を 3 区分に均等に支払った場合(控除額 9 万円) | 4,600 円 | 4,600 円 | 4,600 円 | 18,400 円 | 18,400 円 | 21,100 円 |
| 扶養控除・配偶者控除いずれも控除額 38 万円 | 19,400 円 | 19,400 円 | 19,400 円 | 59,300 円 | 77,600 円 | 89,200 円 |
2026 年(令和 8 年分)の基礎控除・給与所得控除、協会けんぽ(東京都)の保険料率で計算。 社会保険料は概算です。
表から読み取れることが 3 つあります。ひとつは、年収 300 万円から 500 万円まで額が変わらないこと。 いずれも課税所得が 195 万円以下で税率 5% の範囲に収まるため、控除の効果も同じになります。還付額を決めているのは、課税所得がどの税率区分に入るかです。
もうひとつは、年収 700 万円の iDeCo だけ計算が合わないように見えることです。 27.6 万円 × 20% × 1.021 なら 5.6 万円ほどになるはずが、実際は 4.8 万円台にとどまります。 課税所得約 350 万円から 27.6 万円を引くと 330 万円を下回り、 税率 20% の区分から 10% の区分へまたぐためです。控除には税率の段差を下げる効果もあるので、 境界付近では単純な掛け算から外れます。
3 つめは、生命保険料控除がどの年収帯でも扶養控除の 4 分の 1 程度にとどまることです。 年収 1,200 万円でも 21,100 円で、 同じ年収の扶養控除 89,200 円には遠く及びません。 還付額が控除額と税率の掛け算だからです。 年 12 万円払っても控除されるのは 9 万円、扶養控除は 38 万円。税率が同じなら、還付額の差はそのまま控除額の差になります。還付を増やしたいなら、税率の高い年収帯を待つより控除額の大きい制度を選ぶほうが確実です。
還付額だけ見ていると節税額を見落とす?住民税の分
年末調整で精算されるのは所得税だけです。同じ控除は翌年度の住民税も下げますが、その分は還付金として振り込まれません。控除の効果を還付額だけで測ると、半分以上を見落とすことがあります。
モデルケースの iDeCo(月 2.3 万円・ 年 276,000 円)で内訳を出すと次のようになります。
| 税目 | iDeCo なし | iDeCo あり | 減る額 | いつ効くか |
|---|---|---|---|---|
| 所得税 | 91,100 円 | 77,000 円 | 14,100 円 | 年末調整で還付 |
| 住民税(所得割) | 237,000 円 | 209,400 円 | 27,600 円 | 翌年 6 月からの天引きが減る |
| 合計 | - | - | 41,700 円 | - |
年間の節税額 41,700 円のうち、還付として目に見えるのは14,100 円だけ。残る 27,600 円は、 翌年 6 月から 1 年かけて毎月の住民税が 月あたり約 2,300 円ずつ軽くなる形で戻ってきます。 住民税の所得割は一律 10% なので、所得税の税率が低い人ほど、節税額に占める住民税分の割合が大きくなります。 このモデルでは節税額の 66% が住民税分です。
同じことが扶養控除にも生命保険料控除にも当てはまります(住民税では控除額が 所得税より小さく設定されているものが多いため、効果は控除の種類によって変わります)。 iDeCo の節税額を年齢や年収を変えて試すにはiDeCo 節税額シミュレーターを、 制度そのものの選び方は新NISAとiDeCoはどっちを先に?をご覧ください。
令和 8 年の基礎控除引き上げで何が変わった?
令和 8 年分から、所得税の基礎控除が引き上げられました。 本則は 620,000 円ですが、 合計所得金額が一定以下の人には特例加算が上乗せされ、 最大 1,040,000 円まで増えます。 給与所得控除の最低保障額も 74 万円へ引き上げられています。
| 年収 | 給与所得(合計所得金額) | 基礎控除額 | 本則との差(特例加算) |
|---|---|---|---|
| 300 万円 | 2,020,000 円 | 1,040,000 円 | +420,000 円 |
| 500 万円 | 3,560,000 円 | 1,040,000 円 | +420,000 円 |
| 650 万円 | 4,760,000 円 | 1,040,000 円 | +420,000 円 |
| 800 万円 | 6,100,000 円 | 670,000 円 | +50,000 円 |
| 1,500 万円 | 13,050,000 円 | 620,000 円 | - |
モデルケース(年収 500 万円)の基礎控除は1,040,000 円で、本則より420,000 円多い水準です。 この上乗せがなければ課税所得は2,205,000 円となり、 税率 5% の区分(195 万円以下)を超えて 10% の区分に入ります。基礎控除の引き上げは、控除額の分だけ税金が減るだけでなく、 適用される税率区分そのものを 1 段下げる効果を持つということです。
ただしこの特例加算は、所得の区分ごとに段階で切り替わる設計です。 金額が滑らかにつながっていません。そのため境界を 1 円またぐだけで 控除額が数十万円単位で下がり、年収が増えたのに手取りが減る逆転が起きます。 年収 6,655,000 円と 6,656,000 円で比べると次のとおりです。
| 年収 | 基礎控除 | 所得税 | 年間の手取り |
|---|---|---|---|
| 6,655,000 円 | 1,040,000 円 | 193,500 円 | 5,133,280 円 |
| 6,656,000 円 | 670,000 円 | 231,400 円 | 5,096,134 円 |
年収が 1,000 円増えただけで、手取りは37,146 円減ります。 合計所得金額が 489 万円を超えると基礎控除が1,040,000 円から670,000 円へ一段下がるためです。 この付近にいる人が注意したいのは、iDeCo や生命保険料控除のような所得控除を 積んでも、この段差そのものは解消しないことです。 基礎控除額がいくらになるかの判定は、所得控除を引く前の合計所得金額で行うためです。 段差を避けられるのは、給与そのものを繰り延べる(賞与の支給時期を変えるなど)場合に限られます。 年収と手取りの関係は手取り計算ツールで 1 万円刻みに確かめられます。
還付を増やせる控除にはどんなものがある?
年末調整で申告できる控除のうち、会社員が自分の意思で増やせるものは限られています。 代表は iDeCo(個人型確定拠出年金)です。 拠出額の全額が小規模企業共済等掛金控除の対象になるため、 会社員で企業年金がない場合の上限である月 2.3 万円を拠出すれば年 27.6 万円が控除されます。 どれだけ節税になるかはiDeCo 節税額シミュレーターで確認できます。
生命保険料控除は手間がかかりません。すでに加入している保険の証明書を出すだけです。 ただし控除額の上限が 12 万円と小さく、還付額も表のとおり数千円から 2 万円程度。 しかも上限に届くには、一般・介護医療・個人年金の 3 区分それぞれで年 8 万円超、 合計 24 万円超を払っている必要があります。新たに保険に入る動機にするには弱い金額です。
効果が最も大きいのは住宅ローン控除です。所得税から直接引く税額控除なので、 控除額がそのまま還付額に近い金額になります。 ただし初年度だけは確定申告が必要で、年末調整で処理できるのは 2 年目以降です。
年末調整では申告できない控除は?
次のものは年末調整の対象外で、自分で確定申告をしないと戻りません。 会社に書類を出しただけでは処理されないため、取りこぼしが起きやすいところです。
- 医療費控除(年間の医療費が 10 万円を超えた分)
- セルフメディケーション税制(対象の市販薬が年 1.2 万円超)
- 住宅ローン控除の 1 年目
- 寄付金控除(ふるさと納税で寄付先が 6 自治体以上、またはワンストップ特例の申請を忘れた場合)
- 雑損控除(災害・盗難による損失)
ふるさと納税は寄付先が 5 自治体以内でワンストップ特例を申請していれば確定申告は不要です。 限度額の計算や制度の詳細はふるさと納税はいくらまで?のガイドにまとめています。
還付金はいつ戻ってくる?
12 月の給与に上乗せされる場合と、1 月の給与に回る場合があります。 勤務先の給与計算のタイミング次第です。 源泉徴収票の「源泉徴収税額」の欄には、精算後の 1 年分の所得税額が載っています。 自分の計算と照合するなら、この数字を使ってください。
なお、還付金は払いすぎた税金が戻ってくるだけで、収入が増えるわけではありません。 手取りそのものを把握したい場合は年収から手取り額を計算するツールのほうが向いています。
まとめ
還付額は控除額に税率を掛けた範囲に収まるので、年収と控除の種類が決まれば桁は読めます。 期待値を確かめてから書類を用意すれば、労力の配分を間違えません。 自分の源泉徴収税額と控除で試算するには年末調整 還付金シミュレーターを使ってください。 入力した内容はブラウザ内で処理され、外部に送信されません。
還付金を受け取った後の使いみちまで考えるなら、資産形成シミュレーションは何から始める?で 手取りから積立までの計算順を整理しています。