
医療費控除は確定申告が必要?家族分の合算と還付額の早見表
医療費控除は年末調整では受けられません。会社員でも自分で確定申告をします。この記事では申告の手続き、生計を一にする家族の医療費を合算できる範囲、自己負担額と所得税率を組み合わせた還付額の早見表を示します。
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記載の計算結果は一般的な条件による概算です。個別の条件で金額は変わるため、手続きに直結する場面では公的機関の資料を確認してください。 (免責事項)
医療費控除は確定申告が必要?
必要です。年末調整では処理できないため、会社員でも自分で確定申告書を提出します。給与以外に申告するものがなく還付だけを受ける場合は「還付申告」にあたります。
年末調整で処理できるのは、生命保険料控除や扶養控除のように勤務先へ申告書を出せば済む控除です。医療費控除はここに含まれません。国税庁「No.1119 医療費控除に関する手続について」は「確定申告において医療費控除の適用を受ける場合は、医療費の領収書に基づいて必要事項を記載した『医療費控除の明細書』を確定申告書に添付して提出してください」としています。
提出するのは確定申告書と医療費控除の明細書の 2 点です。領収書の添付は不要ですが、申告期限から 5 年間は自宅で保存します。健康保険組合などから届く医療費通知(「医療費のお知らせ」)を添付すれば、明細書の記載を簡略化でき、その分の領収書の保存も不要になります。
還付申告は医療費を支払った年の翌年 1 月 1 日から 5 年間提出できます(出典: 国税庁「No.2030 還付申告」)。2 月 16 日からの確定申告期間を待つ必要はなく、申告し忘れた年分も 5 年以内なら遡れます。ただし個人事業主や、給与以外の所得が 20 万円を超える会社員のようにもともと確定申告の義務がある人は、通常の申告期間(翌年 2 月 16 日〜3 月 15 日)内に医療費控除も含めて申告します。
提出方法は e-Tax(マイナンバーカード方式または ID・パスワード方式)と、書面を税務署へ郵送・持参する方法の 2 通りです。e-Tax の画面の流れや必要な準備は毎年少しずつ変わるため、国税庁の確定申告書等作成コーナーの案内で確認してください。
年末調整で戻る金額の考え方は年末調整でいくら戻る?還付金の計算式と控除別の増える額で扱っています。年収と源泉徴収税額から年末調整の還付額を試算するなら年末調整還付金シミュレーターを使ってください。ただしどちらも年末調整の範囲の話です。医療費の分はこの記事の手順で別に申告します。
家族の医療費はどこまで合算できる?
自分と「生計を一にする」配偶者やその他の親族のために支払った医療費を合算できます。同居は要件ではありません。国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」は対象を「自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合」と定めています。
「生計を一にする」の意義について、国税庁は同居を要件としていません。別居していても、生活費や学資金、療養費を常に送金している場合は生計を一にするものとされます(出典: 国税庁「No.1180 扶養控除」の質疑応答「『生計を一にする』の意義」)。合算できる範囲は次のようになります。
- 同居している配偶者・子・親の医療費。年齢や所得の制限はありません
- 下宿している大学生の子の医療費。生活費や学資金を常に送っているなら合算できます
- 別居の親の医療費。生活費や療養費を常に送金しているなら合算できます
- 共働きの配偶者の医療費。配偶者に自分の収入があっても、生計を一にしていれば合算できます。要件は生計を一にしていることで、税や社会保険の扶養に入れているかどうかではありません
合算するときに 2 つの制約があります。1 つは支払った人です。控除を受けられるのは、その医療費を実際に支払った人です。もう 1 つは年の区切りです。医療費は支払った年で数えます。12 月に受診して翌年 1 月に払った分は、翌年の医療費控除の対象になります。国税庁 No.1120 も「未払いの医療費は、現実に支払った年の医療費控除の対象となります」としています。
合算が効くのは、足切り額を申告する人ごとに 1 回だけ引くからです。1 人分では 10 万円に届かない医療費でも、家族の分をまとめれば超えられます。次は本人 8 万円・配偶者 7 万円・長男 5 万円を支払った年の例です。
| 医療を受けた人 | 自己負担額 | その 1 人分だけを申告した場合の控除額 |
|---|---|---|
| 本人 | 8 万円 | 0 円 |
| 配偶者 | 7 万円 | 0 円 |
| 長男 | 5 万円 | 0 円 |
| 3 人分を合算 | 20 万円 | 100,000 円 |
1 人ずつ申告すると誰も足切り額 100,000 円に届かず、控除額は全員 0 円です。3 人分を合算すると自己負担は 20 万円になり、控除額は 100,000 円が残ります。課税所得が 330 万円超 695 万円以下の人なら、所得税の還付 20,420 円と翌年度の住民税の軽減 10,000 円で合計 30,420 円です。
対象になる費用の線引きは、治療のための支出かどうかで決まります。同じ市販薬でも風邪の治療のために買えば対象になり、予防や健康維持のために買えば対象外です。費目ごとの扱いは医療費控除計算の解説に一覧でまとめました。判断に迷う費用は自分で結論を出さず、領収書を持って所轄の税務署か税理士に確認してください。
医療費控除でいくら戻る?所得税率別の還付額早見表
所得税の還付額は「医療費控除額 × 所得税の限界税率」です。控除額はさらに翌年度の住民税(所得割 10%)も減らします。自己負担 30 万円で課税所得が 195 万円超 330 万円以下なら、所得税の還付が 20,420 円、住民税の軽減が 20,000 円で、合わせて 40,420 円です。
計算は 3 段階に分かれます。
- 医療費控除額 =(支払った医療費 − 保険金などで補填される金額)− 足切り額。足切り額は 10 万円で、総所得金額等が 200 万円未満の人は総所得金額等の 5% になる
- 所得税の還付額 = 医療費控除額 × 所得税率 × 1.021(復興特別所得税を含む)
- 翌年度の住民税の軽減額 = 医療費控除額 × 10%
下の表は保険金などの補填がなく、総所得金額等が 200 万円以上(足切り額 100,000 円)の場合の目安です。上段が所得税の還付額と住民税の軽減額の合計、下段がその内訳です。
| 自己負担額 | 医療費控除額 | 所得税率 5% 課税所得 195 万円以下 | 所得税率 10% 課税所得 195 万円超 330 万円以下 | 所得税率 20% 課税所得 330 万円超 695 万円以下 | 所得税率 23% 課税所得 695 万円超 900 万円以下 |
|---|---|---|---|---|---|
| 15 万円 | 5 万円 | 7,552 円 所得税 2,552 円 / 住民税 5,000 円 | 10,105 円 所得税 5,105 円 / 住民税 5,000 円 | 15,210 円 所得税 10,210 円 / 住民税 5,000 円 | 16,741 円 所得税 11,741 円 / 住民税 5,000 円 |
| 20 万円 | 10 万円 | 15,105 円 所得税 5,105 円 / 住民税 10,000 円 | 20,210 円 所得税 10,210 円 / 住民税 10,000 円 | 30,420 円 所得税 20,420 円 / 住民税 10,000 円 | 33,483 円 所得税 23,483 円 / 住民税 10,000 円 |
| 30 万円 | 20 万円 | 30,210 円 所得税 10,210 円 / 住民税 20,000 円 | 40,420 円 所得税 20,420 円 / 住民税 20,000 円 | 60,840 円 所得税 40,840 円 / 住民税 20,000 円 | 66,966 円 所得税 46,966 円 / 住民税 20,000 円 |
| 50 万円 | 40 万円 | 60,420 円 所得税 20,420 円 / 住民税 40,000 円 | 80,840 円 所得税 40,840 円 / 住民税 40,000 円 | 121,680 円 所得税 81,680 円 / 住民税 40,000 円 | 133,932 円 所得税 93,932 円 / 住民税 40,000 円 |
住民税の軽減額は所得税率が変わっても動きません。控除額の 10% で決まるからです。所得税率で変わるのは所得税の還付だけで、自己負担 30 万円なら税率 5%で 10,210 円、税率 20%で 40,840 円です。同じ控除額でも 4 倍違います。
住民税の分は還付ではありません。翌年度に納める住民税が下がる形で反映されます。会社員なら翌年 6 月からの給与で引かれる住民税が減るため、還付金の入金とは別のタイミングで手取りが増えます。給与から何がいくら引かれているかは年収の手取り計算で確認できます。
表の所得税率は課税所得で決まります。課税所得は源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計額」を引いた金額です。社会保険料控除や扶養控除を引いた後の金額なので、年収の額面から想像するより低い帯に入ることが多いです。表は他の所得控除を考慮しない概算なので、税率の帯は源泉徴収票の実額で確認してください。
自分の医療費での控除額と還付額は医療費控除計算に入力してください。医療を受けた人・支払先・支払った医療費の額・保険金などで補填される金額を行ごとに入れると、確定申告に添付する「医療費控除の明細書」と同じ並びの一覧ができます。入力した内容はブラウザ内だけで計算され、サーバーに送信されません。
10万円に届かない場合やセルフメディケーション税制との違いは?
総所得金額等が 200 万円未満なら足切り額は総所得金額等の 5% に下がり、10 万円未満の医療費でも控除を受けられます。市販薬の購入が中心なら、12,000 円を超えた分を控除するセルフメディケーション税制も選べます。
足切り額は 10 万円と総所得金額等の 5% のいずれか低い方です。総所得金額等 150 万円の人が自己負担 9 万円を支払った場合、足切り額は 75,000 円なので医療費控除額は 15,000 円です。総所得金額等が 200 万円以上の人が同じ医療費を払っても足切り額 100,000 円に届かず、控除額は 0 円です。この年の還付は所得税 766 円と住民税 1,500 円で、金額は小さいものの控除自体は成立します。
セルフメディケーション税制は、医療用から転用されたスイッチ OTC 医薬品などの購入費が年 12,000 円を超えた分(最高 88,000 円)を控除する特例です。通常の医療費控除とは併用できず、確定申告で選んだ後に選択を変更することもできません。健康診査や予防接種、定期健康診断などの取組を行っていることが条件で、取組がない人は控除を受けられません(出典: 国税庁「No.1129 特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(医療費控除の特例)」)。
どちらを選ぶかは控除額の大きさで決まります。通院や入院で医療費が大きかった年は通常の医療費控除、市販薬の購入が中心で通院が少なかった年はセルフメディケーション税制が有利になりやすいです。10 万円ルールの詳しい仕組みや、保険金などで補填された金額の差し引き方は医療費控除計算の解説で扱っています。共働きでどちらが申告すると有利かも、同じ明細で総所得金額等だけを変えれば比べられます。
まとめ
医療費控除で押さえる順番は 3 つです。年末調整では受けられないので確定申告をする。生計を一にする家族の医療費を合算して足切り額を 1 回で超える。戻る額は控除額に所得税率を掛けた分と、控除額の 10% にあたる翌年度の住民税の軽減。この 3 つ目を先に知っておけば、手間をかける価値があるかを判断できます。
自己負担 30 万円・課税所得が 195 万円超 330 万円以下なら戻るのは 40,420 円です。数万円の話であって、医療費の全額が戻るわけではありません。それでも還付申告は 5 年間遡れるので、過去の分の領収書が残っていれば今からでも申告できます。自分の医療費での金額は医療費控除計算で確かめてください。
この記事は 2026 年 8 月時点の制度に基づいています。個別の費目が対象になるかの判断や、複数年にまたがる支払いの扱いは、所轄の税務署か税理士に確認してください。
よくある質問
- 医療費控除は年末調整で受けられますか?
- 受けられません。確定申告で申告します。給与以外に申告するものがなく還付だけを受ける場合は還付申告にあたり、医療費を支払った年の翌年1月1日から5年間いつでも提出できます。2月16日からの確定申告期間を待つ必要はありません。提出時は「医療費控除の明細書」を確定申告書に添付し、領収書は自宅で5年間保存します。
- 別居している親や子の医療費も合算できますか?
- 生計を一にしていれば合算できます。国税庁は「生計を一にする」を同居の有無で判断せず、別居でも生活費や学資金、療養費を常に送金している場合は生計を一にするものとしています。仕送りをしている大学生の子や親の医療費を、実際に支払った人がまとめて申告できます。
- 医療費控除で住民税はいくら下がりますか?
- 医療費控除額の10%(所得割の税率)が目安です。控除額が 20 万円なら約 20,000 円下がります。所得税と違って還付ではなく、翌年度に納める住民税が減る形で反映されます。会社員なら翌年6月からの給与で引かれる住民税が下がります。
- 家族全員分を合わせても10万円に届きません。控除は受けられませんか?
- 総所得金額等が200万円未満なら受けられます。足切り額は10万円と総所得金額等の5%のいずれか低い方なので、総所得金額等 150 万円なら 75,000 円に下がり、自己負担 9 万円でも 15,000 円を控除できます。総所得金額等が200万円以上の人は足切り額10万円に届かず、控除額は 0 円です。
根拠にした資料
この記事の計算式・要件・手続きは次の公的資料に基づいています(リンクの到達確認は 2026 年 8 月時点)。
- No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除) — 国税庁
- No.1119 医療費控除に関する手続について — 国税庁
- No.1129 特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(医療費控除の特例) — 国税庁
- No.2030 還付申告 — 国税庁
- No.1180 扶養控除(質疑応答「生計を一にする」の意義) — 国税庁
改正で変わる数値: 足切り額 10 万円と控除上限 200 万円は所得税法の規定によるもので、長期間改正がありません。所得税の税率区分とセルフメディケーション税制の適用期限は税制改正の対象になるため、改正があればこの記事も見直します。