
年末調整で住民税は戻る?所得税との違いと反映時期
年末調整で戻ってくるのは所得税だけです。住民税は前年の所得に対して市区町村が税額を決める後払いの税金で、年末調整で申告した控除は翌年6月からの天引き額が下がる形で効きます。戻る税金と下がる税金という違いがあるため、同じ控除でも手元で感じるタイミングが半年以上ずれます。この記事では反映されるまでの流れ、年収別に控除でいくら下がるか、申告書の「住民税に関する事項」に何を書くかを順に見ます。
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記載の計算結果は一般的な条件による概算です。個別の条件で金額は変わるため、手続きに直結する場面では公的機関の資料を確認してください。 (免責事項)
年末調整で住民税は戻る?
戻りません。年末調整で精算するのは所得税だけです。毎月の給与から源泉徴収した所得税の合計と、1年間の所得が確定してから計算し直した所得税を比べ、多く預かっていれば差額を返します。国税庁は年末調整を「その人の1年間に納めるべき所得税額を計算し、それまでに徴収した税額との過不足額を求め、その差額を徴収又は還付し精算するもの」と説明しています。
住民税にはこの過不足が生まれません。前年の所得が確定してから市区町村が年税額を決め、それを12回に分けて給与から天引きするだけだからです。先に預かって後で精算する所得税と、確定した額を分割して集める住民税という違いがあります。多く預かることがないので、返す場面もありません。
| 所得税 | 住民税 | |
|---|---|---|
| いつの所得にかかるか | その年の所得 | 前年の所得 |
| 集め方 | 毎月の概算徴収 + 年末に精算 | 確定した年税額を12回に分割 |
| 年末調整での扱い | 過不足を精算(還付・追徴) | 精算しない |
| 控除の効き方 | その年の12月に還付として戻る | 翌年6月からの天引き額が下がる |
| 税率 | 課税所得に応じて5〜45% | 所得割は一律 10%(区市町村民税 6% + 都道府県民税 4%) |
給与から天引きされている住民税の額そのものは給与の手取り計算で確認できます。年収 500 万円なら年税額の目安は 242,000 円で、月あたり 20,167 円です。
住民税にはいつ反映される?
年末調整の翌年6月からです。勤務先が年末調整の結果をまとめた給与支払報告書を翌年 1月31日までに市区町村へ提出し、市区町村がそれをもとに税額を計算して 5月31日までに勤務先へ通知します。勤務先は通知された額を6月の給与から天引きし始めます。控除を申告してから手取りが変わるまで半年ほど空くのはこのためです。
6月から始まった天引きは翌年5月まで 12 回続きます。つまり2026年の年末調整で申告した控除は、2027年6月から2028年5月までの住民税に効きます。転職や退職でこのサイクルが途中で止まるとまとめて徴収されることがあり、その扱いは退職時の住民税「一括徴収」とは?で扱っています。
控除を申告すると住民税はいくら下がる?
住民税は控除額 × 10%だけ下がります。所得割の標準税率が一律だからで、年収がいくらでも同じ控除なら同じ額です。所得税は課税所得に応じて5〜45%の税率が変わるため、年収が低いほど軽減額も小さくなります。
年間 100,000 円の生命保険料を払った場合で比べます。この払込額なら控除額は所得税で上限の 120,000 円、住民税で上限の 70,000 円です。控除額は住民税のほうが 50,000 円小さいのに、軽減額は年収 500 万円以下の帯では住民税のほうが大きくなります。
| 年収 | 住民税の年税額 | 所得税の軽減 | 住民税の軽減 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 300 万円 | 117,400 円 | 4,100 円 | 7,000 円(所得税より大) | 11,100 円 |
| 400 万円 | 176,700 円 | 4,000 円 | 7,000 円(所得税より大) | 11,000 円 |
| 500 万円 | 242,000 円 | 4,100 円 | 7,000 円(所得税より大) | 11,100 円 |
| 600 万円 | 307,300 円 | 8,100 円 | 7,000 円 | 15,100 円 |
| 800 万円 | 453,800 円 | 16,300 円 | 7,000 円 | 23,300 円 |
40歳未満・扶養なし・年間払込保険料 100,000 円(新契約3枠合計で上限)の前提。住民税の年税額は均等割と森林環境税 5,000 円を含む目安です。
住民税の軽減はどの年収でも 7,000 円で変わりません。一方で所得税の軽減は年収 800 万円で 16,300 円まで増えます。税率の段階が上がるためです。年収 500 万円以下では住民税側の軽減のほうが大きく、600 万円以上では所得税側が上回ります。所得税の還付額そのものは年末調整還付金シミュレーター、控除額の計算は保険料控除計算で確認できます。
申告書の「住民税に関する事項」は何を書く?
16歳未満の扶養親族を書きます。扶養控除の対象は16歳以上なので所得税では控除になりませんが、住民税の非課税の判定には16歳未満の子どもも人数として入るためです。東京都主税局も均等割が非課税になる合計所得金額の説明で、扶養親族に「年齢16歳未満の者」を含めています。所得税に関係しないからと空欄にすると、この判定から漏れます。
給与以外の所得がある人は、その分の住民税を給与から天引き(特別徴収)にするか自分で納付(普通徴収)にするかも選べます。副業の所得を普通徴収にすると、その分の税額が勤務先に通知される額に乗りません。ただし普通徴収を選べるかどうかは市区町村の運用によります。副業の申告が必要かどうかの判断は副業の確定申告はいくらから必要?20万円ルールと住民税の申告で扱っています。
申告書そのものの書き方は年末調整の書き方は?申告書の記入例を独身・共働き・副業ありで解説にまとめてあります。
まとめ
- 戻るのは所得税だけ: 年末調整は源泉徴収した所得税の過不足を精算する手続きです。住民税は確定した年税額を分割して集めるだけなので、精算も還付もありません
- 住民税は翌年6月から: 勤務先が翌年 1月31日までに給与支払報告書を出し、市区町村が5月31日までに税額を通知します。効き始めるのは6月の給与からです
- 軽減額は控除額 × 10%: 年収 500 万円で生命保険料控除を満額使うと、住民税が 7,000 円下がります。所得税の 4,100 円と合わせて 11,100 円です
- 「住民税に関する事項」を空欄にしない: 16歳未満の扶養親族は所得税の控除にはなりませんが、住民税の非課税判定に使われます
この記事の金額は前提を置いた目安です。実際の税額は住所地の市区町村が決めます。均等割の額や非課税の基準は自治体によって上乗せがある場合があり、控除額も申告した内容で変わります。自分のケースは市区町村の課税担当と勤務先の給与担当に確認してください。
よくある質問
- 年末調整をしないと住民税はどうなりますか?
- 控除が反映されないまま翌年度の住民税が決まります。勤務先は年末調整の結果をもとに給与支払報告書を作り、翌年 1月31日までに市区町村へ提出します。市区町村はこの報告書で住民税を計算するため、申告し忘れた控除は所得税だけでなく住民税にも効きません。年末調整に間に合わなかった場合は、確定申告をすれば所得税の還付を受けられます。所得税の確定申告書を出すと住民税の申告書も提出したものとみなされるため(地方税法第317条の3)、翌年度の住民税にも反映されます。
- 住民税の控除額は所得税と同じですか?
- 控除の種類によって違います。生命保険料控除は所得税の合計限度額が 120,000 円なのに対し、東京都主税局は住民税について「一般生命保険料控除、個人年金保険料控除、介護医療保険料控除の合計限度額は70,000円です」としています。社会保険料控除のように支払額の全額が対象で所得税と同じものもあります。住民税のほうが控除額が小さい項目が多いのですが、税率が一律 10% のため、税率の低い年収帯では軽減額そのものは住民税のほうが大きくなることがあります。
- 年末調整の還付金に住民税は含まれていますか?
- 含まれていません。年末調整で精算するのは、毎月の給与から源泉徴収した所得税と、1年間の所得が確定してから計算した所得税との差額だけです。住民税は前年の所得に対して市区町村が税額を決め、それを 12 回に分けて給与から天引きする仕組みで、天引きしすぎることがないため精算も還付もありません。年末調整で戻る所得税の目安は年末調整還付金シミュレーターで計算できます。
- ふるさと納税のワンストップ特例は年末調整で手続きしますか?
- 年末調整では手続きしません。ワンストップ特例は寄付先の自治体へ申請書を出す制度で、勤務先は関与しません。東京都主税局は、この特例を「寄附先の地方自治体に控除申請の代行を要請することで確定申告を行わず控除を受けることができる制度」と説明しています。ただし同局は「ワンストップ特例を申請した方でも、5団体を超える自治体に寄附を行った場合や、その他の控除を受けるために申告をした場合には、寄附金税額控除を受けるための申告を行う必要があります」としています。申請書の期限や控除額の計算はふるさと納税のガイドで扱っています。
根拠にした資料
この記事の年末調整で精算するのは所得税だけという点・給与支払報告書と税額決定通知の期限・6月から翌年5月までの徴収サイクル・所得割の標準税率・生命保険料控除の限度額の違い・16歳未満の扶養親族の扱いは次の資料に基づいています(リンクの到達確認は 2026 年 9 月時点)。
- 個人住民税 — 東京都主税局
- 個人住民税と特別徴収について — 東京都主税局 個人住民税の特別徴収推進ステーション
- 地方税法(第314条の2・第317条の3・第321条の5) — e-Gov 法令検索(デジタル庁)
- No.1140 生命保険料控除 — 国税庁
- No.1180 扶養控除 — 国税庁
- 年末調整がよくわかるページ — 国税庁
改正で変わる数値: 所得割の標準税率 10%(区市町村民税 6% + 都道府県民税 4%)と徴収サイクルは頻繁に変わるものではありません。生命保険料控除の限度額は所得税 120,000 円・住民税 70,000 円で、令和8年分と令和9年分は23歳未満の扶養親族がいる場合の一般生命保険料控除に特例があります。早見表の住民税額は所得割10%・均等割と森林環境税5,000円・調整控除2,500円の近似で計算した目安で、自治体独自の上乗せや他の所得控除で変わります。前提の詳細は給与の手取り計算の解説にまとめてあります。